9.心に灯りをともす

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すっかり忘れてたけど、わたしは身元不明の存在なのに… 幕末に戸籍制度があるのか分からないけど、どこの馬の骨かも知れない会津出身と語る不審者がいると聞きつけて来たとか…? やばい、しょっぴかれる寸前ではなかろうか… 「も、申し訳ございません…」 「謝る必要はない。無礼を(たしな)めるそなたは正しい」 「へっ…?いえ…その…」 「武士である我らは傲らず、皆の手本とならねばならぬ。生まれ育ちで差別し非難するなど、傲慢な態度はもっての外」 「ならぬことはならぬものですっ…!」 「ならぬ…?」 「はっはっはっ!」 みんな揃って首を捻る中、お殿様と家臣数名が声高らかに笑う。 「そなた、その言葉をどこで覚えた?」 「はい、会津に生まれ育った者であれば存じ上げております」 「そうか、女子(おなご)も“(じゅう)の教え”を知っておるか。これぞ會津の者だという証!」 「教育が徹底されております故」 「“什の教え”とは…?」 「會津の子供たちの決まり事じゃ。後で皆に教えてやりなさい」 「はい」
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