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「でも…その、お聞かせするほど立派なものでは…」
「謙遜しないで。素晴らしい腕前じゃないか」
「いえいえ!滅相もございません…」
お願いだから、もう何も言わないでください。
はぁ…何でこうなるわけ?
窮地に追い込まれた。
子供たちの前で弾くのとは訳が違うんだよ。
童謡を弾くわけにもいかないし。
大丈夫なの?
世間は攘夷一色。
今、ピアノは完全に外国のもの。
会津は開国した幕府側とはいえ。
どうしよう…ありえない!
無理無理、絶対ムリ!
うまく弾く自信がない…
「西洋の楽器とはどのような音色か?」
「それはそれは美しい奏でにございます」
「腕前など二の次。そなたの奏でる音が聞きたいのだ」
「わたしの、音…?」
お殿様からの直々のご要望。
断れるはずもなく。
ほんとはね。
心が動いたの、少しだけ。
わたしの音が聞きたいと言ってくれた。
その人のために弾きたいと思った。
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