9.心に灯りをともす

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「かれん!ここでいいか?」 気は優しくて力持ち、監察方の島田(かい)さんが軽々とピアノを運んできた。 めずらしい楽器が手に入ったと喜んだのも束の間。 攘夷が盛んになるばかりで、処分に困り隠しておいたものを引き取ってくれるとは、と持ち主のおじさんは手放しで喜んでいたと言う。 お客様たちを前に幕は上がる寸前。 新選組はというと… 各々がガチガチに上がっているわたしを心配そうに、または手に汗握り、はたまた固唾を飲んで見守る。 目が土方さんを探した。 なぜか分からない。 動転してるせい? 視線が合う。 そらされると思ったのに、がんばれと言ってくれたような。 「それでは失礼いたします」 椅子に座りピアノに向かうと、右側から大勢の視線を感じた。 言ってみれば、ショパンピアノコンクール。 大げさかもしれないけど、今のわたしにはそういう感覚。 どうか無事に弾き終わりますように。 尋常じゃない緊張に襲われ、思わず手を合わせて祈る。
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