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「かれん!ここでいいか?」
気は優しくて力持ち、監察方の島田魁さんが軽々とピアノを運んできた。
めずらしい楽器が手に入ったと喜んだのも束の間。
攘夷が盛んになるばかりで、処分に困り隠しておいたものを引き取ってくれるとは、と持ち主のおじさんは手放しで喜んでいたと言う。
お客様たちを前に幕は上がる寸前。
新選組はというと…
各々がガチガチに上がっているわたしを心配そうに、または手に汗握り、はたまた固唾を飲んで見守る。
目が土方さんを探した。
なぜか分からない。
動転してるせい?
視線が合う。
そらされると思ったのに、がんばれと言ってくれたような。
「それでは失礼いたします」
椅子に座りピアノに向かうと、右側から大勢の視線を感じた。
言ってみれば、ショパンピアノコンクール。
大げさかもしれないけど、今のわたしにはそういう感覚。
どうか無事に弾き終わりますように。
尋常じゃない緊張に襲われ、思わず手を合わせて祈る。
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