9.心に灯りをともす

9/22
370人が本棚に入れています
本棚に追加
/868ページ
華麗なメロディがぱーんと頭の中で鳴り響いた。 ショパン『英雄ポロネーズ』 『ポロネーズ第6番 変イ長調 Op.53』 深呼吸。 細く吐いた息も、鍵盤に置いた手も。 どうか震えないで。 目をとじて念じる。 平常心。 大丈夫、弾ける! 3/4拍子(さんびょうし)Maestoso(マエストーソ)、荘厳に、堂々と。 頭の音はfz(フォルツァンド)で2分音符、8分休符の後すぐにp(ピアノ)のままクレシェンド、デクレシェンド。 fz(フォルツァンド)、またp(ピアノ)でクレシェンド、デクレシェンド… 16小節の長い前奏。 半音階のような細かい動き。 スラー、滑らかに。 16分音符で指がもつれてリズムとテンポが狂わないように。 あの力強く有名なメロディに向かってクレシェンド! やはり初めて耳にする音色にざわめく。 やだな、調律してないから。 和音の音程が気持ち悪い。 気づいてないといいけど…
/868ページ

最初のコメントを投稿しよう!