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「異国の音楽でも心に響くのだな。そなたが予に届けてくれたのだ」
「ありがたき幸せにございます」
音楽に国境はない、って本当なんだ。
西洋音楽が幕末の日本人に通用したんだから本当なのだ。
なんか、感動だなぁ…
なんて、ひとりでしみじみしていたら。
歩み寄り、わたしの手を取るお殿様。
「あ…」
驚きのあまり声が詰まる。
「殿!」
「美しい音色を紡ぐ、そなたの手は何と尊いことか」
もうこんな機会は訪れないだろう。
たった一時の賛美でも自然と満面の笑みに変わる。
「その誉れなる才も育むとよかろう」
「仰せのままにいたします」
今までにもわたしのピアノを褒めてくれる人はいた。
大きなコンクールで賞を獲ったことも実はある。
今日初めて会ったお殿様。
会津藩主とはいえ、失礼ながら思い入れがあるわけじゃない。
なのにこれほど、心を震わせるほどの感動で泣きそうになるなんて。
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