12.恋をするとは思わなくて

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「お前…どうした?変だぞ」 「なん…何でもありません」 「何でもないわけないだろ。今にも泣いちまいそうじゃねぇか」 「女の人たちみんな、かわいそうなんだもん…!」 「あぁっ?!」 泣き出しそうなのをぐっと堪える。 「愛がないなんて…ひどい…!うぅっ…」 「何でお前が人の情事に首突っ込むんだよ」 「そうですね…わたし、どうかしてる。ごめんなさい」 どんなに強い人であっても、心を許せる人の存在は必要だよ。 局長たちの他にはいないの? それとも、いらない? これからも本気の恋はしないの? うわべだけの遊びの恋しかしないの? 相手がどれほど土方さんを想ってるかは知らないけど。 愛されることはない。 自分と重なった。 思い知らされる。 だって… 分かってしまう。 伝わってしまうの。 いくらキスをしても、体を重ねても。 この人はわたしを見ていないと。 心からわたしを好きじゃないと。 その想いが本気であればあるほど。 そんなの苦しすぎる。 叶わない恋だと分かってたはず。 ダメかもしれないなんて何回も何回も、何万回も思ったじゃない。 分かってるのになぜ苦しいの? 「お前は本気で惚れたことあんのかよ」     
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