13.心恋[うらごい]し、月下の君

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***** 「かれん君、一体何をしているんだい?その格好は…」 「山南さん!馬の練習です」 「それは見れば分かる…」 そう。 お願いとは、乗馬。 沖田さんの指導の下、早速練習中。 家事の他に何かしていたほうが考え込まなくていいし、気晴らしにもなるし。 「もっとゆっくり走らせたほうがっ!手綱をしっかり握って…ああ、見ていられない」 「すいません、山南さん。かれんにどうしてもって頼まれたもんで…」 「イザというとき馬に乗れたほうがいいでしょう?」 「いざという時って…そんな時はないと思うが」 「この子、相性がいい気がする。名前は?」 「数日前にここへ来たばかりで、まだ名前がないんだ」 「じゃあ、わたしが付ける」 「それより、なかなか筋がいいよ!初めてとは信じられないなぁ」 「ホント?!」 「この馬、気性が荒くてさ。他の馬より手を焼くはずなのに」 褒められていい気分。 「なぜ気性が荒いと分かっている馬を選んで乗せるんだ!」 「それは心配だったけど、今日は比較的落ち着いていたし、島田さんも私も付いているから」 「この子、厩で初めて会ったとき、わたしをじっと見つめてくれたんですよ」 「うわぁ、山南さん、なぜ彼女が馬に…?」     
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