13.心恋[うらごい]し、月下の君

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困るけど、戻ったら土方さんにも、みんなにも二度と会えないんじゃないかな… それも困るんだよねぇ。 思ったんだ。 土方さんが他の誰かに見せる顔は知らない。 新選組副長としての顔も。 イタズラしたときの怒った顔も。 わたしをからかう顔も。 ときどき見せる優しい顔も。 わたしだっていろんな表情を知ってる。 他の人と比べることじゃない。 生まれた時代は違くても。 一緒にいればドキドキして、目が合えばただただうれしい。 話しかけられたら舞い上がって。 真剣な姿を見てときめく。 からかわれればスネてみたり。 モテる人だからって不安になったり。 ほんの少しのことで心のメーターが左右に揺れ動く毎日。 どうしたら土方さんが本気の恋をするかは分かんない。 それに、恋が実るか実らないかなんて誰にも分からない。 それはどこで誰に恋しても同じこと。 弱気になったり、泣くことがあっても。 いつもと変わらない、普通の女の子として恋がしたい。 これが今のわたしの精一杯。 精一杯、好きだよ。 「気をつけて」 沖田さんに支えられて馬から下りる。 「うわぁ…本当に何てきれいな青い瞳なの!」 「片目だけが碧眼なんだね、めずらしいな!」 「オッドアイ…初めて見た」 潤む左右の瞳。 右目は明るい茶色、左目は深い青色。 まるで、琉球ガラスのような海の青。     
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