14.幕末ロマンには恋の魔法を

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お見合いの日。 いつもならテンションの上がる華やかな振袖に袖を通す。 乙女度も上がるだろうか。 おばさんの着付けにもかなり気合いが入る。 「うっ…」 「あれまぁ、堪忍え。気張りすぎてしもた」 「おばさんったら」 「帯、きついか?」 「少し」 「ほんなら緩めよか」 「このくらいのほうが着崩れしなくていいかもしれません」 「そうかて、具合悪なったらしんどいやろ。緊張もあるさかい」 「ですね…」 目の覚めるような鮮やかな紅赤(べにあか)。 土方さんが好きだと言った梅の花の色。 好きな色は赤。 梅なら白梅。 白梅の柄じゃないのが救いだけど、何か…無性に切ない。 「着物、かれんちゃんはこういうんが好きやろ?」 「はい、とっても」 「せやろ?おばちゃんの目に狂いはないわ」 「すみません、わたしのためにこんな上質なもの…」 「ええんよ、娘や思うとるさかいに。娘のためやったら大奮発や」 「ありがとうございます」 「大きゅうなっとったら、かれんちゃんみたいに喜んでくれたやろか…」 「誰がですか?」 「実はなぁ、うちには娘がいたんよ」 「娘さん?今はどちらに?」 「死んでしもた…」 「え…」 「まだ数ヶ月しか経っとらんのよ。夏の終わりに流行り病でなぁ。七つやった」     
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