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「自分の気持ちに嘘をついて、他の方のところへは行けません…」
「難儀やなぁ」
「結婚生活は現実のものやで。浮わついた恋心より、堅実な結婚を選ぶほうが幸せなんやないの?」
山南さんも土方さんも予想外の告白に驚いているようだ。
本人の前でこんな話をするとは。
遠回しの告白。
土方さんに恋心が知られたとしても、みんなにすべてを聞かれたとしても、そんなのどうでもよかった。
こうする以外、分からなかった。
ダメなの。
どうしてもお嫁には行けない。
気持ちを殺して、この恋を自分から捨てるなんてできない。
逃げないと決めた。
自分の心に誓ったんだもの。
押さえつけていた気持ちがあふれて、途中で泣き出してしまった。
必死で塞き止めてたのにな。
「かれんちゃん、ええんよ」
「ごめんなさい…」
「さ、顔上げ」
「おふたりのお顔をつぶしてしまうような事…。ごめんなさい…本当に申し訳ありません…」
おばさんの娘さんへの想い。
叶えられなくて、本当にごめんなさい…
「かれんちゃんがここへ来てくれはったんは、綾からの贈り物ちゃいますやろか…」
「綾が?」
「悲しむうちらを思うて贈ってくれたんよ」
「かれん君が現れたのは、お綾ちゃんが亡くなって二ヶ月ほど経った頃でしたね」
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