371人が本棚に入れています
本棚に追加
/868ページ
しばらくしたら、しれっと会話をフェイドアウトして、ふたりの世界にしてあげなくちゃ。
「かれんちゃん、昼間は助けてもろて、ほんまにおおきにありがとうさんでした」
帰り際、内緒話みたいに耳元でこっそり。
「うちはあんたが羨ましい。土方先生のおそばにずっとおられるさかい…」
その言葉が切なくて。
局長とのご縁がうまく結ばれるといいな。
心の底からそう思った。
「なーんて」
深雪太夫がニコッと笑ったら、大きめの前歯が見えた。
それがものすごくキュートで。
「明日、かれんちゃんとふたりで会いたいんです。ちょっとの間でかましまへんよって。近藤先生、わがまま聞いてもらえますやろか?」
「かれんさん、お願いしてもいいかな?」
「もちろんです!」
局長、幕末で初めて過ごす大坂は、素敵な日々になりました。
わたしを深雪太夫に会わせてくれてありがとうございます。
大切な人がひとり増えました。
局長と深雪太夫。
どうか、ふたりを結んでください。
見上げる夜空に瞬く星。
願いを込めて。
幸せになってほしい人たち。
わたしの周りにはそういう人がたくさんいるの。
飛ばされたのがこの時代のみんながいる場所で本当によかった。
やって来たときには想像もできなかった。
めぐり逢えた人たちがこれほどに大切な存在になるなんて。
最初のコメントを投稿しよう!