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これから数年先の未来に起こること、言わなくていいんだろうか。
例えば言ったらどうなる?
信じてくれたとして。
史実を知れば、戦を防ぐ策が見つけられるかもしれない。
それとも、望むところだと勇んで戦争に行く?
それが濃厚。
容保様も新選組も、自分の意に反する行動はしない。
必ず幕府への忠誠を貫く。
武器や兵力を最新鋭に強化して、それに見合う訓練を毎日徹底的にやれば勝てるかもしれない。
山南さんがいい策を考えてくれるかも。
話してみる?
でも。
もし幕府側が勝ったら、未来はどうなる?
現代まで歩んできた日本の近代史は消える。
来るはずの、わたしがいた未来はやって来ない。
未来を生きるはずの人は生まれないかもしれない。
家族も友達も。
ここで生きていくと決めたけど、未来を切り離すことはできない。
現在ここにも未来にも、大切な人が生きてる。
どうすべき?
わたしにとってはどっちも大切なの。
嘘ついてるみたいで申し訳なくて…。
葛藤を繰り返す。
後ろめたくて、歯がゆくて、苛立たしい…
「どないしたんどす?まばたきもせんと難しい顔しはって」
謎の美女の問いかけに、ハッと我に返る。
「あの…すみません、どなたでしたか?」
「あれま、堪忍え。ころっと忘れてたわ。島原の芸妓の明里どす」
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