3.月あかりは今宵しも

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「まあまあ。何か事情もありそうだし、近藤さんに聞いてからでも…」 「駄目だ。置いておけるか。何か起きてからじゃ遅せぇんだよ」 重苦しい空気が流れる。 ダメだ。 やっぱり話が通じる相手じゃない。 世間も現実も厳しい。 涙を拭いて、よろよろと立ち上がる。 「…分かりました。ご迷惑おかけしました。助けていただいてありがとうございます」 「待ちなさい。君は怪我をしているだろう。もう遅いし、せめて今晩は休んで行きなさい。行くあてもないのにどうするんだ」 「何とかします。大変お世話になりました」 気を遣ってくれた山南さんの言葉を断り、足を引きずりながら出ていく。 あ、草履片方なくしたんだっけ。 右手にバッグ、左手に片草履、裸足で外に出た。 「真っ暗…なんですけど」 黄昏時。 『秋は夕暮れ』とは清少納言はよく言ったものだ。 鮮やかで美しすぎる夕焼けの空が夕闇に変わっていく途中。 切ないほどに身に沁みる。    
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