5.一寸先は紅のくちづけ

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あ、そういえば! ひとつ分かったことが。 あのお揃いの羽織の色。 水色じゃなくて“浅葱(あさぎ)色”って言うんだって。 浅葱色は武士が切腹するときの(かみしも)の色で。 偶然なのか何なのか、ここ壬生村は壬生菜の他に藍の産地で、その壬生の藍で染めた水色は『壬生の色』なのだそうだ。 袖の白いギザギザは“ダンダラ模様”と言うらしい。 何でも、近藤局長が好きな忠臣蔵の赤穂(あこう)浪士の揃いの羽織をモデルにしたんだとか。 真っ赤な隊旗には、ダンダラ模様と大きく“誠”の一文字。 赤は嘘偽りのない真心、誠は幕府や会津への忠誠心の意味があるんだって。 そんなの正直どうでもいい情報。 しかもあの羽織、芹沢先生が裕福な商家からカツアゲしたお金で作ったみたいだし。 あ~!やだやだ! 桶に張られた汚れた水に映る顔が、ため息を漏らす。 部屋の片隅に置いた箒と叩きを眺め肩を落とした。 うぅ…掃除機…
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