5.一寸先は紅のくちづけ

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圏外だけど、試しにメールしてみようか? こっち見てないよね? 左之助兄ちゃんに背を向けて、着物と帯の間からケータイを取り出す。 弟の(はるか)にでも。 カチカチ…慣れた手つき、素早く動く親指。 “元気?何してる?” …でいいか、ひとまず。 今の状況をメールで説明するのは難しい。 「送信!」 一生のお願い! 繋がって! “送信できませんでした” はぁ…案の定エラー。 やっぱダメか… 予測どおりの結果に、ガックリとうなだれた。 「やあ!かれんさん」 「はっ、はい!」 あわあわと慌てたために裏返る声、するりと手から落ちそうになる未来の機械。 セーフ。 何とか握りしめ、後ろ手に隠してニッコリ顔を向ける。 通りかかった局長、沖田さん、藤堂さんに声をかけられた。 焦った… この摩訶不思議な未来の小型機器、見つかったら何て説明したらいいか。 気づかれないよう帯の間に戻し入れる。
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