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6.月のない夜には君の名を
芹沢鴨が死んだ。
わたし、恐ろしいものを見てしまった…
全身の震えが止まらない。
恐怖しかない。
一晩中、布団の中で震えていた。
その夜はすごい雨だった。
これから起きる出来事の激しさを予感させるような大雨。
夜中にふと目を覚ました。
人はみんな寝静まり、ザーッという雨音だけが聞こえる。
「すごい雨…」
“バケツをひっくり返したみたいな雨”
って表現はこのことだろう。
少し寒い。
こんなに雨降ってるけど、昔の家って雨漏りしないの?
大丈夫かな?!
またもやお気楽能天気なことを考えながら、階段を下りてトイレに向かう。
トイレは“厠”って言うんだよね。
わたしが借りている部屋は八木家の2階。
部屋には窓がない。
襲撃されたときに逃げられないから、隊士は使えないみたいで。
フンフン♪と鼻歌を歌う。
実はトイレにひとりで行くのが怖いの。
子供みたいだけど、電気がないし真っ暗なんだもん。
何かあったら…って思うとゾクゾク鳥肌が立っちゃう。
ちょっとだけ不安がよぎる。
嫌な予感、とまではいかないけど。
何て言えばいいんだろう。
胸がザワザワして鼓動が速まる、この感じ。
変なことは考えない、考えない。
いつもと同じ。
オバケも何もいない!
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