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「はぁ…何だ」
「何かと思えば、そんなことかよ」
「そんなこと?!」
「大したことじゃねぇよ」
息巻いてるのはわたしだけ。
自分たちのことを言われてるのよ。
何でそんなに平気な顔…
「だってひどいじゃない!よく知りもしないのに勝手なこと言って」
「人間なんぞ、そんなもんだろ。噂話が好きなのはどこの連中も同じさ」
「君の我々を思う気持ちはとてもありがたいがねぇ」
「サイテー!思い出すだけでムカつく!」
「じゃあ、思い出すな」
メラメラと激しく荒れ、怒りの炎は鎮まらない。
「いちいち怒ってたら身が持たねぇぞ」
「言ったろ。俺たちをよく思わねぇ奴等も多いと」
そんな他人事みたいに…永倉さんも土方さんも呆れて笑うなんて。
「あまり噛みつくと、君も悪く思われてしまうよ」
「そうそう。簡単なことさ。気にせず聞き流すんだ」
山南さんや源さんまで、なかなか気が和らがないわたしにいつものオトナの応対。
「わたしは何言われたっていいんです」
「“義を見てせざるは勇なきなり”とはまさに」
そう、ぽつりと。
黙って聞いていた局長が口を開いた。
「私は元々、多摩の百姓の出でね。皆も決して家柄がいいとは言えないんだ」
「家柄って重要ですか?大事なのは志でしょう?」
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