8.義を見てせざるは

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「はぁ…何だ」 「何かと思えば、そんなことかよ」 「そんなこと?!」 「大したことじゃねぇよ」 息巻いてるのはわたしだけ。 自分たちのことを言われてるのよ。 何でそんなに平気な顔… 「だってひどいじゃない!よく知りもしないのに勝手なこと言って」 「人間なんぞ、そんなもんだろ。噂話が好きなのはどこの連中も同じさ」 「君の我々を思う気持ちはとてもありがたいがねぇ」 「サイテー!思い出すだけでムカつく!」 「じゃあ、思い出すな」 メラメラと激しく荒れ、怒りの炎は鎮まらない。 「いちいち怒ってたら身が持たねぇぞ」 「言ったろ。俺たちをよく思わねぇ奴等も多いと」 そんな他人事みたいに…永倉さんも土方さんも呆れて笑うなんて。 「あまり噛みつくと、君も悪く思われてしまうよ」 「そうそう。簡単なことさ。気にせず聞き流すんだ」 山南さんや源さんまで、なかなか気が和らがないわたしにいつものオトナの応対。 「わたしは何言われたっていいんです」 「“義を見てせざるは勇なきなり”とはまさに」 そう、ぽつりと。 黙って聞いていた局長が口を開いた。 「私は元々、多摩の百姓の出でね。皆も決して家柄がいいとは言えないんだ」 「家柄って重要ですか?大事なのは志でしょう?」     
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