9.心に灯りをともす

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気づいたら土下座をしている自分がいて。 なぜ、こんなに必死で頭を下げてお願いをしているのか不思議だった。 ただ、新選組が侮辱されるのが嫌だっただけなのに。 「民の心はすぐに掴めるものではございません。長い間の信頼の積み重ねが大切なのでございます」 上下関係が厳しいならば、きっと差別もあるだろう。 身分が高い人はそれを愚かなことと気づかず、当然のことだと思うのだろう。 お殿様のこのお人柄ならば、人の心に寄り添ってくれると信じたい。 会津の人の気質上、堅物の家臣も多いだろうけど、それを進言してくれる優秀な家臣だっているはずだ。 「もしも世界が闇に包まれた時には、どうかわたしたちに手を差しのべ、ほほえみを向けてくださいませ。そして民の声を聞き、共に立ち上がり戦ってくださいませ」 「それだけで良いのか?」 「はい。人間にとって苦しいときには、それは意外と難しいことなのかもしれません。ですからわたしたちはそれだけで、心に灯りをともすことができるのでございます」 「ふむ。心に灯り、であるか」
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