12.恋をするとは思わなくて

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ボッと顔が瞬時に赤くなったのが分かった。 噴火直前。 「いいからいいから。素直になりなさい」 見られてたの?! 恥ずかし過ぎて、穴があったら入りたい… 「自分でもびっくりしてるんだよ…」 左之助兄ちゃんにぐっと顔を近づけ、じーっと見る。 「おかしいな」 「何だよ」 「左之助兄ちゃんだって顔はかっこいいのに、何か色気は感じない」 「顔は?!何て失礼な」 「気も合うし、強くておもしろくて大好きだけど、ぜーんぜんときめかない」 「それは俺とかれんがすでに兄と妹だからだろ」 確かに。 「土方さんの好みってわたしとは真逆な気がしない?」 「そりゃあ…否めねぇな。しっとり美人な色っぽい姉ちゃんが好きなんじゃね?」 「だよね…」 終わってる… 何でこれだけ男がいる中で土方さん? ホントにあの人じゃなきゃダメ? わたしだけを見てくれる人だっているはずだよ。 冷静にならなきゃ。 一点を見つめ、ムムーッと考え込む。 眉間に指が刺さった。 おどけてニカッといつもの笑顔。 つられて笑った。 「左之助兄ちゃん」 「ん?」 「左之助兄ちゃんは何で島原に行かないの?」 「べべべ別にいいだろ!そんなの」 「左之助兄ちゃんが島原に行くって見たことも聞いたこともないもん」 「俺のことはいいんだよ…」 「ねぇ、何で?」     
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