370人が本棚に入れています
本棚に追加
/868ページ
「うん…女子に学問は必要ないと言う者もいるのは確か。しかし、私はそうは思わない」
「局長…」
「志を持つ権利はある。百姓にも、女子にもね」
「生きる道は自分で決めたいのです。それが普通の人とは変わっていても。笑われたっていいんです」
わたしは今、江戸時代にいるけど。
好きでもない見知らぬ人のためにここにいるわけじゃない。
お願い、土方さん。
たった一言。
「行くな」
そう言って?
そしたら…
「いい話じゃねぇか。云々かんぬん言ってねぇで行って来いよ」
「歳!」
「気の強い、お転婆娘をもらってくれるって言うんだ。ありがたいと思え」
一瞬で心が凍りつく。
愕然とした。
その言葉だけで、わたしに致命傷を負わせる威力があるって知らないのね。
目の前が真っ暗で。
耳へ入る音も遮断されて、何も聞こえない。
ぼんやりしている間にトントン拍子に話が進んで、おじさんとおばさんの喜ぶ顔が見えた。
ただ愛想笑いをして頷くだけ。
わずかでも何でそんな言葉を期待したんだろう。
バカみたい。
そんなこと言ってくれるわけないのに。
悲しくなるだけだって知ってたはずなのに。
最初のコメントを投稿しよう!