14.幕末ロマンには恋の魔法を

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「うん…女子(おなご)に学問は必要ないと言う者もいるのは確か。しかし、私はそうは思わない」 「局長…」 「志を持つ権利はある。百姓にも、女子(おなご)にもね」 「生きる道は自分で決めたいのです。それが普通の人とは変わっていても。笑われたっていいんです」 わたしは今、江戸時代にいるけど。 好きでもない見知らぬ人のためにここにいるわけじゃない。 お願い、土方さん。 たった一言。 「行くな」 そう言って? そしたら… 「いい話じゃねぇか。云々かんぬん言ってねぇで行って来いよ」 「歳!」 「気の強い、お転婆娘をもらってくれるって言うんだ。ありがたいと思え」 一瞬で心が凍りつく。 愕然とした。 その言葉だけで、わたしに致命傷を負わせる威力があるって知らないのね。 目の前が真っ暗で。 耳へ入る音も遮断されて、何も聞こえない。 ぼんやりしている間にトントン拍子に話が進んで、おじさんとおばさんの喜ぶ顔が見えた。 ただ愛想笑いをして頷くだけ。 わずかでも何でそんな言葉を期待したんだろう。 バカみたい。 そんなこと言ってくれるわけないのに。 悲しくなるだけだって知ってたはずなのに。
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