370人が本棚に入れています
本棚に追加
/868ページ
陽が暮れたばかりとはいえ、電灯もビルの明かりもない江戸時代は、現代に比べて幽暗だ。
昔の人は夕暮れのことを『逢魔時』とも言ったそうだ。
昼と夜とが移り変わる時間帯。
幽霊や妖怪や魔物に出くわしそうな怪しい雰囲気。
とてつもなく不吉な時刻、ということ。
言われてみれば…異様。
よく言えば神秘的。
普段のこの時間帯も雰囲気も何ともないのに、古風な景色と浮世離れした異質体験がそう思わせる。
浮世離れした…なんて思ってるけど、もともとこの時空間で暮らす人たちに言わせてみたら、迷い込んだわたしのほうが時代錯誤なんだろうな。
この辺りは長閑なのか、耳をすまさずとも虫の声がよく聞こえてくる。
かろうじてある民家の灯り。
ほのかな灯りを頼りにあてのない道を歩く。
これからどうしよう…
ここはどこ?!
大学生になって京都に住み始めて数ヶ月、あちこち行ってはいるけど、それはあくまで現代での話。
最初のコメントを投稿しよう!