5.一寸先は紅のくちづけ

18/24
371人が本棚に入れています
本棚に追加
/868ページ
「すいません、原田さん。ここ、拭いても…」 「いいから、いいから」 ニカッと笑って再びゴロゴロ。 これが大切な日課らしい。 いいな、暢気で羨ましいよ。 仕方なしに、寝そべる彼を避けてその周りを拭いてゆく。 「原田さんは…」 「何て他人行儀な。左之助って呼べよ」 「できません!さすがに呼び捨ては…」 いきなり飛び起きて、名前の呼び方の提案。 「じゃあ“左之助さん”でどうだ?呼んでみろ」 「左之助さん…」 「んー何か違うな…ほんじゃ、“左之様”!」 「左之様?」 別に呼び方なんて何でもよくない? 「…そうだ!俺を兄と慕い“左之助兄ちゃん”と呼べ!」 「左之助兄ちゃん…?」 「うん、いいな!それでいこう!」 左之助兄ちゃん…は鼻歌を歌いながら、三度ゴロンと横になった。 訂正。 このほうがわたしにとってもいいのかも。 もっと仲良くなれそうで。 最初の読みどおり、この人、左之助兄ちゃんとはうまくやっていけそうだわ。   
/868ページ

最初のコメントを投稿しよう!