椿と昼寝

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 大阪の町中生まれで自動車の運転は嫌だとカブの運転しかしなかった。まあ出来なかったのが正しいけれど、父には指摘しないのが暗黙の了解だ。  今はカブも運転しなくなり、免許証はただの身分証明書になってしまった。  母は父と対照的で外に出たい人だ。   実家の敷地にこれでもかと花の鉢が並べてある。車が二台楽に停められるはずのスペースは花の鉢で占領されて停め辛いったらない。そこまでして育てた花は、きれいに咲く直前に公民館や市の施設に貸し出してしまう。 「ボランティアなのよ。毎年頼まれると嫌と言えないから仕方ないわよね」と嬉しそうにせっせと花の手入れをしている。ホームセンターや園芸店が行きつけの店なのだ。  その合間に卓球の練習に試合、それにグランドゴルフ、さらに友人たちとランチに出たり何かと忙しくしている。  その間で父の運転手や食事の支度をしなければならないのだから忙しいだろう。そこへ私が離婚して、中学生の娘を連れて戻って来たのだ。世話が増えると嫌な顔をされても仕方がない。
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