椿と昼寝

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椿と昼寝

 今年は四年ぶりにストーブを出した。ヤカンはしゅんしゅんと一定のリズムを刻みながら湯気を出している。その横にアルミホイルに包まれたサツマイモがごろんと二本置いてある。    独り暮らしをするまで冬が来ると見ていた光景が懐かしい。就職して誰にも干渉されない自由が欲しくて実家を出た。そのまま結婚して実家に戻ることがなかった。  五年前、離婚して一人娘を連れてここに戻った。  母は近所の目を気にしたが父は黙って迎えてくれた。   父は退職してからリビングの隅に机を置き、ラップトップのパソコンで株価のチェックとフリーセルをしている。その合間に雑誌のパズルを解いたり、食事をしたり、トイレに立つ。ほとんど外出をしなくなったと母が気をもんでいた。  足腰が弱る、病院に行くのにいちいち車で送るのが手間だなど、文句はすべて私が聞く役目だ。コンパクトカーがあるけれど運転は母の仕事だ。
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