星降る夜に、君を抱き締めたい。

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必死に自転車のペダルをこぐ。 ――聖に逢いたい。 聖に自分の気持ちを伝えたい。 帰らないで……。 お願い……まだ帰らないで……。 公園に自転車を停め、携帯電話を見ると、時刻は午後九時二十分。 公園の桜はまだ蕾。 お花見の時期にはライトアップされるけど、閑散として誰一人いない。 ――やっぱり……そうだよね。 聖がいるわけないんだ。 夜空を見上げると、きらきらと星が煌めいている。 この公園で、こんなに星が見えるなんて、知らなかった……。 綺麗……。 「吉沢ー……!!まだ帰らないで!」 「……えっ?」 声のする方に振り返ると、そこには息を切らした聖が立っていた。 「……聖」 「ごめん。英会話教室、今日が最後の授業だったから、遅くなってしまったんだ。本当にごめん……」 聖が…… 私に逢いに来てくれたの? 息を切らして、必死で自転車を走らせて、こんな私に……逢いに来てくれたの?
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