星降る夜に、君を抱き締めたい。

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―三月一日 京薗高校卒業式― 厳粛な空気の中で、卒業式は行われた。 楽しかった学校生活。 たくさんの仲間と出逢い、たくさんの想い出が出来た。 体育祭、文化祭、野外活動、修学旅行、どれも忘れられない想い出だけど、私にとって一番の想い出は、放課後聖と二人で勉強したこと。 僅かな期間ではあったが、とても満たされた時間だった。 校歌斉唱、走馬灯のように浮かぶ想い出。涙が溢れて止まらない。 最後に教室で撮った友達との写真。 そこにはカリンちゃんの姿や、陽も聖もいる。 近くて、遠い、聖との距離。 最後まで、自分の気持ちを伝えることは出来なかった。 母と一緒に帰宅した私は、卒業証書を机の上に置く。 三年間使用した学生鞄。 鞄の中身を全部取り出し、必要なものと不要なものとに分別する。 教科書を不要な箱に入れるために持ち上げると、ぱらりと一枚の便箋がフローリングの床に落ちた。 「あっ、あの時の……!?いけない、陽に返さないと」 陽とカリンちゃんは、あの日から付き合い始めた。 もう、この手紙は必要ないかもしれない。でも、勝手に処分することは出来ない。 これは、陽のサプライズなんだから。
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