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「……えっ?」
「これは、俺じゃないよ」
「うそ!?えっ?陽じゃないの?」
私の思考回路は混乱している。
こんなキザなセリフ、陽しか考えられない。
「やだな、吉沢さん。まだわかんないの?これ聖だよ。聖からのラブレター」
「えっ?聖がカリンちゃんに!?」
聖がカリンちゃんのことを好きだったなんて、ショック過ぎる。聖も陽とカリンちゃんが交際を始めて、きっとショックで立ち直れないはずだ。
だから卒業式で、そわそわして落ち着きがなかったのかな。
私と目も合わせてくれなかったし。
「聖がカリンに?それはナイよ。聖は俺がカリンを好きだってこと知ってたし、机を間違えるほどドジじゃない」
ますます混乱してきた。
だったら、どうして……?
「あいつさ、今日英会話教室なんだ。英会話教室が終わって星見公園まで自転車を飛ばしたら、時刻はぴったり午後九時だな」
「嘘だよ。私なんか地味でつまんないし……」
カリンちゃんが私の顔を覗き込み、眼鏡をスーッと外した。
「やっぱり可愛い。ずっと思ってたの。吉沢さんは眼鏡外したら可愛いって。聖はきっと眼鏡の奥のこの瞳に、ドキドキしてたんだよ」
「……やだ。眼鏡返して」
私はカリンちゃんから眼鏡を奪い返す。
「はい、これも吉沢のだから返すよ。約束の場所に、行くも行かないも吉沢次第だから。聖を振るなら、ちゃんと逢って振ってやってくれ。あいつ、意外と打たれ弱いからな」
私は両手で手紙を受け取る。
この手紙は……
聖が私に……!?
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