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「牧瀬だけじゃわかんないよ。でも……こんなキザなセリフは陽しか書かないよね。まさか……?陽は学校でモテモテなんだよ。私みたいな地味子に……」
――不意に教室のドアが開き、私は慌てて、鞄に手紙を突っ込んだ。
「おはよう吉沢さん。今日も早いね」
「おはようカリンちゃん。今日は早いね」
教室に入って来たのは、去年の四月に東京から転校してきた、吉澤カリン《よしさわかりん》。
私とほぼ同じ名前だが、容姿は月とすっぽん。彼女はふわふわの巻き髪、黒目がちの大きな目をしていて、睫毛も長くクルンと上を向いている。
お人形みたいに可愛いくて、転入してすぐに学校のアイドルになった。
「今日も雪だね。東京はあまり雪降らないから毎日雪だなんて驚いちゃうよ」
彼女は「はぁー」って自分の手に息を吹き掛けながら、私の前の席に座った。
席順は、先週からあいうえお順だ。
「吉沢さんは、京都の大学なんだよね?」
「うん。カリンちゃんは?」
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