先生

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「誰に会いたいんですか?」 陽介は、ハッと目を見開いた。 よく知った声音が、聞こえた気がしたからだ。信じられずに固まっていると、もう一度同じ声が、「誰に会いたいんですか?」と問いかけてきた。 ようやく手を退けて、陽介は顔を上げた。 外灯に照らされ、逆光になっているが、誰だがすぐに分かった。 ーーー樹だった。 「…や、…いち?」 「何もそんなに驚かなくても良くないですか?俺がお化けみたいじゃないですか」  声と共に近づいてくる。明かりに照らされて見えた樹は、最後にあった日から、少しだけ大人びていた。服装もシンプルだが、以前のようなパーカーにジーンズよりも少しお洒落になったようだった。 「まあ、びっくりはしますよね。 … 久しぶり、今張先生」  陽介は、樹がこの場にいることが信じられずに、しゃがみ込んだまま固まっていた。それを見て、樹が少し困り顔で後頭部を掻く。 「なんで … ここに …… ?」 「あ~ … それは、その …… もう時効だと思うから言いますけど……先生のスマホに、先生の場所が分かるアプリを入れました」 「……は?」 「その…俺のスマホにも入れて、相手の居場所がGPSで分かる、みたいなやつ … 」 「 … はぁ?」 ドスの利いた声で陽介が声を上げると、さすがに樹もビクッと肩を震わせつつ申し訳なさそうに頭を下げた。 「すみません。でも、今は入ってないですよ?ちゃんと消しました。その…俺の卒業式の日に会ってくれないから…なんか、浮気でもするのかと思って…。…その時だけ入れました。そしたら、ここに来てたから…もしかしたら今日もここに居るのかと思って来てみたんですよ」 樹が墓石を見つめる。 「浮気じゃないと思ってたけど … 浮気、だったんですか?」 「…なに、言ってんだ」 どう言って良いのか分からず、陽介は震える声で呟いた。
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