◆二.

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 修学旅行の引率で来ている私と山城先生は、班別研修で京都の北東側、銀閣寺、平安神宮、京都御所を担当していた。班別研修では4~5人の班行動で自由に京都中を生徒が回っているわけだが、その間教員もずっと宿で暇しているわけではない。幾つかの名所に待機して、来訪する生徒達を確認する。もっとも厳密に確認するわけではなく、写真を撮ってあげたり、話を聞いてあげたりする程度だ。  人でごった返す中、無理やり参道で自転車を押して進む私と先生の姿はさぞ奇異に映ったことに違いない。おかげで、土産物屋の中にいた生徒達にもすぐ見つけてもらえたので結果オーライと言えば結果オーライだった。「先生二人揃って恥ずかしい」と散々、生徒にネタにされたのは言うまでもない。生徒に会う目標も達成したし、次のポイントのこともあり、結局私たちは境内にすら入らず銀閣寺を後にしたのだった。 「お、『さくらソフト』ですって。この花見の時期限定らしいですよ、食べてみませんか?」  哲学の道の途中に会った茶屋の看板の前で、先生が突然立ち止まる。 「食べてみたいですけど……いいんですかね。もしかしたら生徒が見てるかも……」 「だからこそですよ。生徒が口にするものかもしれないんですから、僕たちできちんと味わっておかないと」  と、言うや否や自転車を留めて受付に足を運ぶ。味わってって本音が漏れ出てる……と苦笑しながらも、たまに見せるこういう子どもっぽいところもまた、山城先生の魅力だった。
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