◆七.

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◆七.

 法然寺の桜は10年前と全く変わらず、未だそこにあった。  観光客はみな、哲学の道の桜に夢中で、この桜には目もくれない。  誰にも注目されずとも、しかしその桜は立派にそこに咲いていた。  ざわざわと、風に揺れる枝、舞い落ちる桜の花びらは当時を思い起こさせる。  彼との一番の思い出の地はやはり、この桜の木の下だ。  そしてそこに、山城先生は、いなかった。
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