探偵と仔猫

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探偵と仔猫

 ピンクのネオンが窓を照らす。  風俗や水商売で埋まる街の一角にある古くて汚い雑居ビルの三階。  月3千円の激安家賃の事務所のソファで寝ている中年男。  明神 忠信  それが本名なのかどうか。誰も確かめた事は無い。だが、彼は二年前にフラリとこの街にやって来て、いつの間にかここに探偵事務所を開いた。  年齢はアラフォー。体躯は細身だが、弱々しいわけじゃない。顔はどこか疲れた感じのおっさんという感じだった。着ている服はヨレヨレの黒いダブルの背広。    コンコンコン  突如として、ドアをノックする音が部屋に響き渡る。  明神は一瞬、目を覚ますが、すぐに瞑った。  コンコンコン  再び、ノックする音が聞こえる。  「ちっ・・・営業時間外だよ」  明神はそう呟くと毛布で頭を覆う。  ゴンゴンゴン  かなり強めに扉がノックされる。  ゴンゴンゴン  それも何度もだ。  ガンガンガン  叩く音は手から足に変わったようだ。一体、何者だ?こんな時間に。  明神は面倒ながらも、ソファから立ち上がった。そして、扉の前に行く。  「すいませんね。営業時間外なんで、明日、出直してください」  「そ、そんな暇は無いんです!」  女の子の声が聞こえた。     
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