第一話 伝説の復活

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『こうして、グレンガの活躍により、ジャラキは闇の世界に封印された。だが人の心に闇がある限り、鎧魔は復活の機会を狙っている。鎧魔の影がある限り、グレンガは戦い続けるのだ……』 「お父さん、グレンガって凄いよね!」  数分前までテレビの前に釘付けになっていた羽黒翼は、目を輝かせてはしゃぎ回る。 「そうだね、かっこよかったね」 興奮が冷めやらない娘を見て、羽黒幹夫は穏やかな笑みを浮かべる。  かつてこの地を支配しようと非道の限りを尽した邪悪な呪術師・ジャラキ。 その尖兵として生まれながらもジャラキに反旗を翻し、戦いを挑んだ戦士・グレンガ。  藤真市に伝わるこの伝承を元に製作されたご当地ヒーロー番組が、翼が今観ていた「鎧魔勇者グレンガ」だった。   「この街にこんな凄いヒーローがいたなんてビックリだよ!」 町おこしの一環として制作されたグレンガは、原典たる伝承と比べても子供向けに分かりやすく、派手にアレンジされている。  羽黒家は古くからこの街に根を下ろしており、グレンガの伝承自体は幹夫も知っている。 だが現代では真偽も不明なおとぎ話のような扱いになっており、ヒーロー番組としてその伝承が注目されても、それを信じる人間はそういない。  それでも翼にとっては、自分の住んでいる街を守る為に戦ったと伝えられるグレンガは、身近で輝かしい存在に見えたのだろう。 「でも、ジャラキは倒されてないんだよね……いつかまた出てくるんじゃないかって、不安になるよ」  伝承ではグレンガは自らの力の全てを出し尽してジャラキを封印したが、人間の負の感情を糧とするジャラキはいずれ再び蘇るであろうことが予見されて締めくくられており、鎧魔勇者グレンガもその結末を踏襲している。  ジャラキがいずれまた蘇り、自分達に襲いかかってくるのではないかと、翼は本気で恐れていたのだ。 「……ジャラキは人間の弱い心や悪い心を吸収して強くなったらしいからね。そうした心は時代が変わった今でも誰でも持っているんだ。ジャラキは私達を睨みながら、今か今かと蘇るチャンスを狙っているのかもしれないね……」  神妙な面持ちで語る父の姿を見て、翼の表情が不安で曇る。 「……グレンガ、私達を助けてくれるかなぁ……」 「大丈夫だよ翼。鎧魔が現れたときは、グレンガもまた現れる筈だよ。そのときはグレンガを信じて応援しよう」  不安に駆られた翼をなだめるように、幹夫は翼の頭を優しく撫でた。 __そしてまた、数年後__
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