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いつか、願いが叶いますように。
桜は強く儚い。
一時の夢。
けれど、全ての人を魅了する。
そんな桜のお話。
昔々、だけど昨日のことかもしれないお話。
川を挟んで左側の領土を西家、右側を東家という勢力で別れていた。
両家の仲は大変良く、互いを支え合っていた。
両家の楽しみは年に一度、西家と東家の丁度真ん中にある立派な桜の木の下でその桜が1番綺麗に見える日に花見をしながら酒を飲み、これからの国を語ることであった。
そんな繋がりは100年にも及んだ。
西家、東家は互いにこの桜と共に育つ。
幼少の頃、最初の友はこの桜だった。
初めて桜以外の友が出来た時の桜は少しだけ寂しそうに、けれど嬉しそうに揺れ、初めて学を学んだ時、桜に問題を出し共に考え悩んでる様に揺れ、初めて嫁を貰った時、嫁を紹介し喜んでる様に揺れ、初めて子が生まれた時、喜んで泣く様に揺れ、初めて子が歩いた日も、桜に報告し、共に成長し、命が尽きる前、最後に桜に会い、また逢おうと約束をしこの世をさる。
両家にとってこの桜は家族そのものであった。
そんなある時、西家の一人息子が遥か北にある良家に婿に行くこととなった。その際、桜の木の枝を持って行きたいと言い出した。
「西家の息子はこの桜を切ると申すのか!?」
東家の息子は怒り、今までの仲良くやっていただけに、西家の行為は裏切りだと刀を手にとった。
争いが起こるのは一瞬。
憎しみ合い、互いを恨み、昨日の友も忘れ。
決戦は桜の目の前で。
桜は悲しかった。
共に笑うことが好きだった。
両家が互いの話しをしてくるのが嬉しかった。
辛い時一緒に泣けるのが幸せだった。
「やめて!」
その言葉を届けることが出来ないことが辛い。
「この美しい桜を傷付けることは許さん!!」
「美しいからこそ北の地にもその美しさを伝えたいことが何故わからんのだ!?」
互いの言い分はどちらもわかる。
それだけに桜の心は痛かった。
悲しく揺れても見上げてはくれない。
私には「声」がない。
それがとても悲しく、涙が落ちるように桜の
花びらが舞い落ちた。
争いは悪化して行き、ついには命を落とす者も現れた。
「だめ…このままじゃ…。」
桜は意を決した。
争いで使われている火薬。
火の精霊に頼み。
少しだけ力を借り。
それを自身に。
放った。
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