曇り空に咲く1

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「さ…桜が燃えている!!!!」 「なに!?水だ!水を持ってこい!!! 火を消せ!!」 両家の争いは止まり、燃え盛る炎を消そうと互いに水を持ちあった。 争いが起こってからの、久しぶりの両家の気持ちが一つになった。 桜の炎は燃え行くが、どこか嬉しそうに見える。 「なんで、なんでそんな嬉しそうなんだ…?」 桜と共に育ってきた者たちにはこの桜の感情がわからないはずはなかった。 桜は嬉しそうに燃えていた。 「火が強すぎて桜に近づけんっ!このままでは…。」 「くそ…なんで…」 「我々が争っていたからか…?だから…桜に火がついたことに気が付かなかったのか?」 両家は互いに顔を見合わせ、はっとした。 「桜…お前まさか…わざと…?」 桜は笑った様に揺れた。 西家も東家も自分たちの愚かさに、膝から崩れ落ちて嘆いた。 「桜ぁ!!すまん!!!そうだよな。お前が…お前が1番悲しかったよな…。」 「共に生き、また来世で逢うと約束をしたのに…桜、お前が死んでしまっては…。」 「すまん…。」 「すまんかった…。」 両家は止まることのない涙を流しながら声をあげて泣いた。 後悔しても桜は帰ってはこない。 自分自身を恨む代わりに、もう二度と、争うことはしないと誓い合い、また泣いた。 やがて、桜の炎が燃え尽きるころ、雨が降り始めた。 雨は桜の涙の様に優しく、美しかった。 桜も泣いている。 両家はそう思った。 どれほどの時間そこで過ごしただろう。 雨が上がり、燃え尽き、姿を消した桜に両家が近寄る。 桜との思い出が走馬灯のように駆け巡る。 そしてもう一度だけ、涙を流した。 そうして、ふと顔を上げると空には虹がかかっていた。 あの虹が、何故か桜に似てる気がして両家は手を上げて虹に手を振った。 「桜、またいつか、逢おう。」 自然と言葉が溢れ、今度は涙ではなく、笑顔がこぼれた。 桜のそんな過去の話、夏都は目を閉じ、少し寂しそうに笑うと少し昔を思い出し、泣いた。 私の声が、届きますか?
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