スコップ

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
いつだっただろう、何年前だっただろう。 あの大切な思い出。忘れたくない思い出。 どこかへ閉まってしまった2人の思い出。 掘り起こす時に約束したよね。 『掘り起こす時は、絶対に2人で掘り起こそうね』って……。 ごめんね、もっと早く来ればよかったね。 約束果たせずにごめんね。 ごめんね…。 ねぇ、見てる?君は今どんな感じなのかな、怒ってる?笑ってる?悲しんでる?泣いてる? もう僕には興味が無くなってるのかな…。 もしそうだとしても僕は君を恨んだりしない。 逆に恨まれるのは僕の方なんだから。 思い出を見るのが怖かった。見たら君を思い出してしまうから。 今まで拒んできてごめんね。 でもやっと決心がついたんだ。 『遅くなったね。』 僕は小さい頃お互いが使っていた2つのスコップを持ってきた。それは、思い出を埋めたスコップ。 『一緒に掘ろうよ、約束果たそうよ、君と僕で。』 桜の木の下で僕は隣にいる君と思い出を掘り起こす。 僕は君を感じた。君が見えた。君を触った、君と目が合った。君と泣いた。君と…笑いあった。 それは紛れもなく、君が見るものだった。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!