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episode229 サイコパス変性 ①
「昨夜は――大人しく眠りましたね」
「え?」
「部屋に来なかったから」
翌日の早朝。
まだ眠たそうな椎名涼介は僕の為に
空港へ向けて愛車のジャガーを走らせていた。
「ああ、夜這いをかけてやろうと思って部屋を出たんだけどね」
昇ったばかりの朝日を受け
眩しげに目を細めながら椎名さんは自嘲気に笑った。
「またしてもお祖母様と鉢合わせしてさ――夕飯のスープが辛くて水を飲みに出てきたって。夜中の2時だよ。2度も水を差されりゃさすがの僕だって――」
「見透かされているのかと?」
あのお祖母様ならあり得なくもない。
「ま、おかげでよく眠れましたよ」
「よく眠れたって?その顔で?」
ターミナル近くの駐車場に車を止めると
椎名さんは言った。
「まだ時間がある。コーヒーでもどう?」
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