episode229 サイコパス変性 ①

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僕が雲の上を歩くような フラフラした足取りで辿りついた頃には。 到着ロビーには続々と 帰路につく人々が姿を表し始めていた。 忙しなくあたりを見回す。 見逃すはずなんかないのに。 どこにいたってあの人が 人波に埋もれてしまうようなことはない。 「……和樹?」 そして彼の方も 僕がいつどこに現れたって見逃すはずはない。 「九条さん!」 振り向くと小型のトランクケースを引いた彼が 夢から覚めたばかりのような顔をして立っていた。 僕の方は? 僕はどんな顔してるんだろう? およそ想像もつかないまま僕は 柔らかな素材の彼のロングコートの裾が 歩くたび蝶の羽のように揺れるのを 立ち尽くしただ呆然と眺めていた。
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