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謝るべきなのか。
それとも問い詰めるのが先か――。
僕と寝ていた男を滅多刺しにしただろって?
もしくはその場になんらかの
きっと由々しき理由があって居合わせただけなのかって?
――とても無理だ。
「どうしたの?こんなところまで」
考える間もないまま
爪先がぶつかりそうな距離まで来て
九条敬は僕に尋ねた。
「どうしたって……僕は迎えに来たんだ……あなたの事……」
パリで毎晩アロマセラピーでも受けてたのか。
彼が近づくと微かに――だが紛い物ではない花の香りがした。
「それは――待ちきれなかったってこと?」
僕の花束が
とびきり甘い声音で囁く。
「――寝坊助のくせに」
それでも僕はなかなか
顔を上げる事さえ出来なかった。
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