episode229 サイコパス変性 ①

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だいぶ長い時間に感じる沈黙が下りて。 やがて九条さんは静かに 俯いたまま身動きしない僕の腰を抱いた。 「なんだか――死神を迎えに来たみたいな顔だね?」 「あっ……」 トランクから離れたもう片方の手が そう言って僕の唇を撫でる。 「ほら、目を上げて」 言われても――。 「ん……」 甘やかな指遣いに僕はただ 言葉を失った赤い唇を震わせるだけで精一杯だった。 「困ったな。可愛い子が――僕の顔を見てくれなくなった」 溜息交じり彼は僕の耳に囁く。 「ねえ、どうすればいい?」 僕は余計に硬直した。 優しい声色にどこか 九条敬らしからぬ駆け引きを楽しむような響きがあったからだ。
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