episode229 サイコパス変性 ①

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無論――僕に拒絶できる道理はない。 「うん……」 見様によっては 照れたように可愛らしく頷くと 「じゃあ行こう」 九条さんは腰に回した手に ほんの少し力を込めて僕を引き寄せた。 強引にではなく いつもと同じようにあくまで優しく紳士的に。 空港を出ると九条さんは素早くタクシーをつかまえた。 しかし乗り込んだタクシーの中でも僕らは無言のままだった。 それは心地のいい沈黙とは言い難く (何か話さなくちゃ……) 話を切り出そうとすればするほど僕の沈黙は深まった。 怖いんだ。 何をどう切り出すのも。 改めて愛という存在に触れる時 僕は驚くほど無知で臆病になる。 それを察してか。 九条さんは前を向いたままただ僕の手を握っていた。 温かく時折撫でるように――。
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