episode229 サイコパス変性 ①

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温かい唇が首筋を下ってくる。 彼の唇の動きに合わせて 僕は差し出すように首を反らせた。 口を噤んでいようかと思った。 聞かれないならいつまでだって。 そして彼の与えてくれる快楽に ただ身を委ねてしまえばいい。 そうすれば何もかもなかったことになるんじゃないかと。 そんな気さえした。 「アア……ンッ……」 九条さんは僕の身体の隅々まで愛撫した。 それは僕が待ち望んでいた通りの抱擁、口づけ、指遣い。 むしろあまりに理想的な形で与えられるから 夢と現実の間を行き来しているようで 僕は時折恐ろしくなった。 同時に悟り始める。
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