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温かい唇が首筋を下ってくる。
彼の唇の動きに合わせて
僕は差し出すように首を反らせた。
口を噤んでいようかと思った。
聞かれないならいつまでだって。
そして彼の与えてくれる快楽に
ただ身を委ねてしまえばいい。
そうすれば何もかもなかったことになるんじゃないかと。
そんな気さえした。
「アア……ンッ……」
九条さんは僕の身体の隅々まで愛撫した。
それは僕が待ち望んでいた通りの抱擁、口づけ、指遣い。
むしろあまりに理想的な形で与えられるから
夢と現実の間を行き来しているようで
僕は時折恐ろしくなった。
同時に悟り始める。
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