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本当に愛する人の手に身を委ねると
騙しが利かなくなる――。
「九条さん……」
つまりは黙っていられなくなった。
「何だい?」
だけど失った言葉を取り戻すのは難しく。
先に溢れてきたのは涙だった。
彼の方は僕が泣き出したことを
不思議には思わなかったみたいだ。
「おいで――」
シャツを肌蹴た王子様は裸にした僕を抱き起すと
後ろからすっぽりと抱きしめて
「君が敏感なのは身体だけじゃない――心もだよ、和樹」
唐突に言った。
「ン……」
「そう。ここだね」
後ろから心臓部に触れる手は
欲望と愛着に昂ぶって小刻みに震える。
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