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「幸か不幸か――僕が見たのは最後の――本当に最後の一時」
それは幸いだったとは
口が裂けてもとても言えない。
だけど事実だ。
「真っ最中なら――殺してた」
きっとそれも。
九条さんは低く唸ると
一層僕を求めるように剥き出しの素肌に手を這わせた。
「それで……」
一番聞かなくちゃならないのはその先だった。
僕は心を決めると
身をよじり彼の顔を覗き込んだ。
「あなたが薄井を……?」
このしなやかな指先が
死なない程度に男を八つ裂きにしたのか。
「それとも……誰かを雇って?」
かろうじて手を下しはしなかったものの
誰かに恐ろしい命令を下したか。
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