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「いいや――」
次の瞬間
僕は何もしていないと彼は言った。
「え?」
「――僕はその場にいただけだ」
九条さんは複雑な顔をして
逆に僕を問い詰めた。
「君は本気で思ったの?――僕が嫉妬に狂ってあの男を刺したと?」
「それはっ……」
冷静に考えれば
九条敬がそんな事するはずないと分かりそうなものなのに。
「雇った誰かにあいつを襲わせたと?」
あの夜から今まで
冷静に考える時間なんてこれっぽっちもなかったんだ。
「そうすれば良かったかもな」
九条さんの手は
急に温かみを取り戻したように感じられた。
「でも……あなたはあの場にいた……つまり」
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