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まさか――。
真白な海に飛び込んだように
急に何も見えなくなる。
「征司お兄様……だった……?」
「ああ、間違いない」
そう言われてしまえば
疑う余地はないのだろう。
九条敬は嘘をつくような人間じゃないし
大事な場で人違いをするような間抜けでもない。
「征司くんが部屋を出てすぐ、僕は薄井の様子がおかしい事に気が付いた。それでとにかく彼の後を追ったんだ」
「見つかった?」
「いいや。それどころか現場に戻った時には君も薄井も忽然と姿を消していた」
九条さんはいまだ混乱の最中にいるように
大きな溜息を吐いた。
「だけどおかしいよ……だって征司お兄様は……」
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