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「こりゃ彼に会う前に心の澱を取り除いた方が良さそうだ」
「心の澱……?」
「話してごらん。君の思うとおり」
優しさ半分。
半分はいつものよろしくない好奇心。
それでも僕は話さずにいられなかった。
「あの人――征司お兄様はね、いつでも僕の一部なんですよ、椎名さん」
「うん。身内と言うぐらいだからね」
「身内、そうか。今は笑えないと言ったでしょう」
思ってもなかった身を切るような声が出た。
「ごめん。聞くよ」
「とにかくあの人は僕の一部だという思いが強いから――どれだけ怒ってたって、機嫌を損ねてたって、実際会うのはそんなに怖くはないんです」
「天宮征司が怖くない?それ本当?」
「多分」
僕がそう言うのだから本当なんだろう。
「あの人に関して僕が恐れているのはただ一つ」
「それは何?」
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