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「自分から切り離して考える事――」
僕は迷いなく言った。
その答えは出会った日からずっと決まっていたように明確だった。
「自分から切り離して考えられないほど、あの人は僕の中に深く根を張っているの。それを根こそぎ取り除けば、僕も無事ではいられない」
「つまり?」
「生きられません」
深く根を張っているだけじゃない。
僕らの根は目に見えないところで複雑に絡み合い
今ではもう――無理に解こうとすればどちらも無事ではいられない。
「だけど君は九条敬を求めてる」
僕の思考回路を止めるように
椎名涼介は冷ややかな声で言った。
「彼の些細な顔色の変化や、言葉尻ひとつにまで緊張しながら――怖々自分を晒してそれでも愛されるか試してるんだ。まるきり恋に奥手な女の子みたいに」
認めたくないけれど的を得ている。
僕は頷いた。
「元々の僕は――愛には無縁で――」
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