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意地悪な質問。
僕は指先でカプチーノの泡のついた
彼の唇を塞いで言う。
「根とは違う――だけど」
あの人のことを考えると
自分でも可笑しいほどロマンチックな言葉しか浮かばなくなる。
「なに笑ってんのさ。情緒不安定だな」
「ごめんなさい。こう言おうと思ったの――」
椎名涼介のセクシーな手首に巻かれた
腕時計を覗き込む。
もうそこそこいい時間だった。
「根はないかもしれない。だけどあの人は瞬時瞬時に僕の人生を彩る花束なんです」
「花束?」
「ギフトだ――まさに神様からの美しい贈り物」
胸が高鳴る。
カプチーノのカップをもう一度手に取るけれど
今は緊張で飲み物さえ喉を通りそうもない。
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