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「もう行かなくちゃ」
カップをテーブルに戻すと
僕は軽く椎名さんの頬にキスして席を立った。
「送って下さってありがとう。お祖母様にもよろしく」
椎名さんはハグする手に力を込めて
僕を捕まえると。
「根も花も枯れたら僕んとこ来いよ」
甘い声音で耳元に囁いた。
「――耕して種付けしてやるから」
朝っぱらから
ふざけてる。
「もうっ……」
僕は苦笑いで彼の手をすり抜けると
「根も花も枯れません。でも――また遊びましょう、ハムレット」
いつもの彼の台詞を横取りして店を出た。
そこからは一目散
到着ロビーに向かって駆け出した。
何も考えられない。
どんな花束を受け取るか予想もつかないまま
僕はとにかく先を急いだ。
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